萩美術館・浦上記念館を訪ねて
第5回リポートの舞台は、萩市にある「萩美術館・浦上記念館」。
学芸員の吉田洋子さんにお話を伺いました。
池田蕉園と輝方─夢見る美人画の特別展とは?
池田蕉園、輝方は、明治時代末期から大正時代初期に、甘美ではかなげな女性の姿を描いて一世を風靡し、夫婦で活躍した近代美人画の作家です。
本展覧会は、蕉園と輝方の画業を本格的に紹介する初めての企画です。
夫婦で美人画を描いてまさに愛とアートの融合ですね😊

池田蕉園と輝方の生い立ち
蕉園は15歳の時に浮世絵の流れを汲む水野年方に入門し、同門の池田輝方と出会って婚約するのですが、輝方が失踪し、約7年の会えない日々が続きました。
その間の悩みや苦しみを創作へ昇華させた蕉園は、一気に才能を開花させ、画家として評価を高めました。
輝方との結婚後は、文展(文部省美術展覧会)で共に受賞を重ねる等、おしどり画家として華々しい活躍をみせ大変な人気でしたが、蕉園31歳、輝方38歳で早逝したため、今では忘れられた存在となってしまいます。
池田蕉園と輝方の魅力とは?
蕉園はモダンな家の出身で、妹をモデルに華やかな着物や当時流行の髪形をした美人画を得意としました。また目元をぼかして夢見るような眼差しが特徴で、当時は蕉園の画風を真似る画家が沢山現れました。
蕉園は女性の鑑賞者からも大変な人気で、婦人雑誌や少女雑誌にも度々取り上げられ、挿絵や口絵という巻頭に差し込むイラストも手掛けています。
輝方は、江戸情緒が残る下町の職人の家に生まれ、浮世絵の流れを汲む画家の水野年方の内弟子として入って修行をしています。
作品には、江戸を思わせる主題や女性風俗を描きました。
蕉園の代表作「かえり路」とは?
大正4年の第9回文展で3等賞を受賞した蕉園の代表作です。長く行方が分からなかったのですが、近年再発見されました。
もとは6曲屏風であったものが、4屏風となっていました。
失われた2扇には、通り過ぎていく若衆が描かれており、主人公女性がそれを目で追うという男女の出会いの場面が描かれていました。

気になる展覧会の作品とは!?
蕉園と輝方の画業を本格的に紹介する初めての企画です。
展覧会に出品された重要な作品でありながら、長らく所在が分からなかった作品や、浮世絵の伝統的な技術を継承する木版画、泉鏡花ら文芸界との親しい交わりから生まれた小説の木版口絵や、婦人雑誌の挿絵にいたるまで、代表的な作品を一堂に見ることが出来ます。
しかも!担当学芸員による作品解説を、会期中毎週日曜、午前11時から実施します。事前申し込み不要なので、お気軽に参加して下さい!
5月18日には、蕉園と輝方を題材にした漫画「夢ちょうものは頼めそめてき」の作者、灰田高鴻さんを交えて、特別ギャラリートークを行います。

特別展の詳細
「池田蕉園と輝方─夢見る美人画」は6月1日まで開催しております。
開館時間は午前9時から午後5時まで。
一般1,500円、学生と70歳以上は1,300円、18歳以下は無料です。
是非、萩美術館・浦上記念館までお越し下さい。
5回目のリポートについて
萩美術館・浦上記念館の作品を拝見し、その時代の「美しさ」の価値観や、装飾や背景に隠された物語があり、社会や文化を学べたと思います。
皆さんも是非足を運んで見てください。次回のリポートもお楽しみに😃

萩美術館・浦上記念館
萩市平安古町586‐1
Tel. 0838‐24‐2400