『株式会社TACOOGAMA 久野公寛さん』 前編
山口県で毎週木曜日にお届けしている「コスモ アースコンシャス アクト 未来へのメッセージ in 山口」。
今回は、山口県防府市で「タコのお家」たこ壺を作っている、日本で最後の「たこ壺職人」株式会社TACOOGAMAの久野公寛(ひさのともひろ)さんにお話を伺いました。
久野さんが「たこ壺」作りの世界に入ったきっかけは、意外にも「たこ壺」そのものではなく、「登り釜」への憧れでした。
まるで「レンガの生き物が寝ているような」巨大な釜に魅了され、この釜で火を焚いてみたいという情熱から職人の道を志しました。
「日本最後の職人」としての使命
かつては他にも職人がいましたが、昨年九州の職人が引退したことで、久野さんは日本で最後の「たこ壺職人」となりました。
現代の漁業では、軽くて丈夫なプラスチック製の「たこ壺」が主流です。
プラスチック製は蓋が閉まる構造になっており、効率よくタコを「獲る」ことに適しています。
しかし、久野さんが作っているのは、全く異なる目的を持つ「素焼きのたこ壺」です。

「獲るため」ではなく「増やすため」の壺
久野さんの作る素焼きの「たこ壺」は、ロープをつけずに海底に沈められます。
その主な目的は、タコが安心して卵を産める場所を提供する「産卵用」。
プラスチック製が海に残ればゴミ問題に繋がりますが、素焼きの壺は3年~4年かけて海の中で割れ、削れ、最終的には「砂」に戻ります。
千葉県から鹿児島県まで、広い範囲の海に設置されており、これらの壺をたくさん入れた海域では、タコの漁獲量が安定し、中には「タコバブル」と言われるほど増えた場所もあるそうです。
久野さんの「たこ壺」は「海の中に建てられた、100%天然素材のリサイクル型マンション」のようなものです。
タコに安全な住まいを提供し、役目を終えれば静かに土へと還り、また次の命を育む礎となるのです。
海を育て、命をつなぐ・・・久野さんの「たこ壺」は、未来の海への贈り物のようです。

