萩博物館 百年の布~美しき襤褸の世界~

ぼろ…ボロボロ…「使い古してヨレヨレになった布地のこと」だそうですが、漢字で書くと「襤褸」。なんだかパリッと高級感ある文字の羅列ですよね!

現在、萩博物館(萩市)では【春季特別展 百年の布~美しき襤褸の世界~】を開催中です(*^-^*)

リポート前に学芸員の松尾優平さんのガイドを頼りに展示会場をぐるりと見学させていただきました。

展示されていたのは…現在では私達にとって身近な存在で手に入りやすい木綿が普及する約100年前に流通していた数々の衣類。ドンザと呼ばれる藍染の半纏、麻から作られた素朴な内着、中には衣類を織る際に活用されていた織機や衣類に加工される前の藤から撚られた糸など、珍しい品もありました。萩市内で保管されていたものはもちろん、広島や島根など近隣の県からも貴重な布が集まっていましたよ。

これらは全て100年前には日常生活で使用されていたものというから驚きです!

100年前に使っていたというと…衣類に限らず家具や食器など、さすがにどんなものでも古く朽ちて、それこそボロボロなイメージが湧いてしまいますよね;;

100年と言うと、先日まで100年のファミリーヒストリーをテーマにしたドラマも放送されていましたが、親子3世代に渡るほどの歳月ですよね。それだけの長い年数を経て尚、展示に耐えうる形を保っているのだろうか?と思っていましたが…今回展示されている衣類(布)の数々は、ものによってはまだ現役で着用できそう!に見えるほど保存状態が美しいのです。

それもそのはず。木綿が普及する以前は布地の原料となる素材が超希少で入手することが難しかった為に、布の素材となる繊維を入手するところから大変な苦労があったそうなのです。まず糸の素材となる植物を採集することからスタートしたら、糸を撚って布を作って、それを衣類に加工して更に染料で染め上げて……もちろんミシンなんて文明の利器はまだ登場していませんから上着一着さえ作り上げるまで気が遠くなるような手作業や膨大な時間が費やされています(@_@;)

それを日々の暮らしを支える仕事や家事の合間に制作するのですから一言で表すと「めちゃくちゃ大変!」ですよね…。頻繁に新しい服を製作するわけにはいかないということで、手塩にかけた一着一着を、汚れたり破れたりしても修繕を何度も繰り返しながら長年丁寧に大切に取り扱われてきたのだとか◎

よく【昔の方はモノを大切にする】と聞きますが…何かを生み出すまでの手が込んだ過程を知ると、当然であり尊敬するべきことだなぁ~と感じます。代えの効かない一枚だからこそ「流行遅れになったから/ちょっと破れちゃったから」といった理由で、スグに切り捨てて新しいものに飛び付くことは贅沢なことだったのですね…(ファストファッションもそれはそれで異なるメリットもありますが(#^.^#))

今回の展示品の中にも、もはやパッチワークのデザインのようにも見えるツギハギで沢山の衣類もありました。気軽には処分できないからこそ、何度も補修しながら長年着用している内に100年近く経過していたのでしょうか。生活必需品も、現代となっては当時の生活環境を紐解くレアな資料です!

歳月を重ねた質感が滲む風合いや枯れた色合いも、萩の土地に生きていた人々が大切にされ続けてきたのだと思うと…例えいわゆるボロボロであったとしても愛しく美しい一着に見えてきます。

とは言え、保存状態も良いものばかりなので是非!会場で歴史を背負った様々な布たちを目にして、昔の人の暮らしに想いを馳せてみてくださいネ。

5月22日(日)、6月11日(日)14:00~は事前予約不要の学芸員さんによるギャラリートークも企画されていますよ(各日先着15名まで)。

今年のGWは少し文化的に過ごしてみてはいかがでしょうか♪

萩博物館 春季特別展 百年の布~美しき布の世界~

(チラシ画像は萩博物館さま公式HPからお借りしています)

3月19日(土)~6月19日(日)

※6月8日(水)~6月10日(金)は休館

9:00~17:00(最終入館16:30)

観覧料 一般¥520/大学・高校生¥310/小・中学生¥100